スペイン語の por と para。この2つは幅広い表現に用いられる前置詞ですが、重要かつ似ているだけに、混同しやすいクセ者でもあります。
それぞれどのように使うのか、例文や会話を参考にしながら学んでいきましょう!
混同しやすいスペイン語の前置詞「porとpara」の使い分け
スペイン語のporの使い方
por と para はいずれもスペイン語の前置詞で、もっとも基本であり重要な単語です。表現方法が似ていますが、使い方を間違わないようにそれぞれの役割を覚えておきましょう。
まずは por の使い方を詳しく説明します。
場所を表すpor
【por+場所】で「付近、周辺」という意味を表すことができます。明確な地点ではなく、おおよその場所や空間を示すというのがポイント。
例えば「ここ」という意味の単語 aquí(アキ)を使って por aquí(ポル アキ)といえば「この辺り」となります。
La casa de María estará por aquí.
ラ カサ デ マリア エスタラ ポル アキ
マリアの家はこの辺りにあるはずだ。
Esa calle está por el centro de la ciudad.
エサ カジェ エスタ ポル エル セントロ デ ラ シウダッ
あの道は街の中心部にある。
Por el norte de España llueve bastante.
ポル エル ノルテ デ エスパーニャ ジュエベ バスタンテ
スペイン北部地域では雨がかなり降ります。
通過を表すpor
【por+場所】の組み合わせは「〜を通って」という通過・経由を意味することもあります。「〜辺り」という意味と似ていますが、どんな動詞を伴うかによってニュアンスが異なってくるので注意してください。
下記のような単語を伴うと、その場所を「通る、通過する」という意味になります。
- entrar(エントラル)=「入る」
- salir(サリール)=「出る」
- pasear(パセアール)=「散歩する」
Los sábados me gusta pasear por la playa.
ロス サバドス メ グスタ パセアール ポル ラ プラージャ
私は土曜日にビーチ沿いを歩くのが好きだ。
Nosotros siempre entramos en la oficina por la puerta de atrás.
ノソトロス シエンプレ エントラモス エン カサ ポル ラ プエルタ デ アトラス
私たちはいつも裏口から会社内に入っている。
Hubo un incendio en la empresa y los trabajadores salieron por la salida de emergencia.
ウボ ウン インセンディオ エン ラ エンプレサ イ ロス トラバハンドレス サリエロン ポル ラ サリーダ デ エメルヘンシア
社内で火災が発生し、従業員たちは非常口から退出した。
時間を表すpor
【por+時間・期間】で「~の間に」という期間を表します。例えば「午後」という単語を使って por la tarde(ポル ラ タルデ)とすれば「午後中に」という意味です。時間を示す単語の前には冠詞を置くことも忘れずに。
Voy a ir tu casa por la tarde.
イレ ア トゥ カサ ポル ラ タルデ
午後のうちにキミの家に行くよ。
Mi madre solo bebe café por la mañana.
ミ マドレ ソロ ベベ カフェ ポル ラ マニャーナ
私の母は朝コーヒーしか飲みません。
Ellos trabajaron allí por seis meses.
エジョス トラバハロン アジ ポル セイス メセス
彼らはそこで6ヶ月間働いた。
原因や動機を示すpor
【por+名詞】で原因や動機を表します。例えば por el viento (ポル エル ビエント)なら「風が原因で=風が強かったので」。このように冠詞+名詞を por のあとに続けると、物事や行為の理由を説明することができます。
Al final, no fuimos a la playa por el viento y nos quedamos en casa.
アル フィナール, ノー フイモス ア ラ プラージャ ポル エル ビエント イ ノス ケダモス エン カサ
結局、風が強かったので僕たちはビーチへは行かず家にいた。
Han despedido a Luis por los problemas que ha dado.
アン デスペディード ア ルイス ポル ロス プロブレマス ケ ア ダド
彼らはルイスが引き起こした問題を理由に彼を解雇した。
Le han dado un premio por su labor humanitaria.
レ アン ダド ウン プレミオ ポル ス ラボール ウマニタリア
彼の人道的活動に対して(その貢献が理由となり)賞が与えられた。
手段や方法に関するpor
「メールで連絡する」「ネットで買い物をする」など、「〜を使って」「〜で」という手段や方法を表す時にも por を使います。
ポイントは手紙や荷物を送る、ネットでメッセージを送る、といった通信やコミュニケーションの際に使う言い方であるということ。「車で向かう」「電車で出勤する」などの移動の手段を示す前置詞ではないので注意してください。
Te mando las fotos por e-mail.
テ マンド ラス フォトス ポル イーメール
写真はメールで送るよ。
Mañana te llamaré por teléfono.
マニャーナ テ ジャマレ ポル テレフォノ
明日電話で連絡するね。
Compré este ordenador por internet.
コンプレ エステ オルデナドール ポル インテルネット
彼はパソコンをネットで購入した。
交換や取引に関するpor
【por+名詞(金額など)】で交換や代替に関する表現ができます。取引の際に金額を提示したり、何かの対価として値段を付けたり、何かと何かを引き換えたり、誰かの代行をしたり。そのような時に使う言い方です。
例えば por 50 euros(ポル シンクエンタ エウロス)なら「50ユーロと引き換えに=15ユーロで」という意味。「50ユーロで売る」「50ユーロで譲る」といった内容を伝えられます。
Estos zapatos los compré por 50 euros en una tienda de la calle Goya.
エストス サパトスロス コンプレ ポル シンクエンタ エウロス エン ウナ ティエンダ デ ラ カジェ ゴヤ
この靴はゴヤ通りにある店で50ユーロで買った。
Ayer vendí mi bicicleta por cien euros en Internet.
アジェール ベンディ ミ ビシクレタ ポル シンクエンタ エウロス エン インテルネット
僕は昨日、ネットで自転車を100ユーロの価格で売った。
¿Me cambias tu manzana por mi naranja?
メ アンビアス トゥ マンサナ ポル ミ ナランハ
君のリンゴと僕のオレンジを交換してくれない?
porを使った慣用句
por を使った慣用句がいくつかあります。次の表現はいずれも日常会話で非常によく使われているので、覚えておきましょう。
- por favor(ポル ファボール)お願いします
- por supuesto(ポル スプエスト)もちろん
- por lo tanto(ポル ロ タント)したがって、よって、ゆえに
- por cierto(ポル シエルト)ところで
- por fin(ポル フィン)やっと
- por ejemplo(ポル エヘンプロ)例えば
- por eso(ポル エソ)だから
- por lo general(ポル ロ ヘネラル)一般的に
実際の会話例で見るporの表現方法
【理由を表すpor】
A: No me puedo creer que Alberto siga en ese trabajo duro.
ノー メ プエド クレエール ケ アルベルト シガ エン エセ トラバホ ドゥロ
アルベルトがあの大変な仕事をまだ続けているなんて信じられない。
B: Lo hace por el dinero; le pagan un sueldo muy bueno.
ロ アセ ポル エル ディネロ, レ パガン ウン スエルド ムイ ブエノ
給料がすごくいいからね、彼はお金のために働いているのよ。
【おおよその期間を表すpor】
A: ¿Por qué te llevas la maleta al hospital?
ポル ケ テ ジェバス ラ マレタ アル オスピタル
なぜ病院にスーツケースを持っていくの?
B: Es que tengo que quedarme allí por unos días.
エス ケ テンゴ ケ ケダルメ アジ ポル ウノス ディアス
数日間は病院で過ごさなくちゃいけないから。
スペイン語のparaの使い方
目的や意図に関するpara
【para+名詞、動詞など】で目的を表すことができます。para trabajar en España(パラ トラバハール エン エスパーニャ)といえば、「スペインで仕事をする目的で」という意味です。
Estoy estudiando español para trabajar en España.
エストイ エストゥディアンド エスパニョール パラ トラバハール エン エスパーニャ
私はスペインで仕事をするためにスペイン語を勉強している。
Está ahorrando dinero para estudiar en el extranjero en México.
エスタ アオランド ディネロ パラ エストゥディアール エル エクストランヘロ エン メヒコ
彼はスペイン留学のためにお金を貯めています。
Mi jefe me ha llamado para que le informe.
ミ ヘフェ メ ア ジャマード パラ ケ レ インフォルメ
上司はその情報を知らせるために私に電話をしてくれました。
受取人や対象を表すpara
【para+名詞や代名詞など】で物や行為の受け取り手を表します。人物の前に para を付けると「〜へ」「〜のために」という意味に。プレゼントを贈る相手や手紙の宛先など、対象者を示す時に使われる表現です。
He traído este pastel para María.
エ トライド エステ パステル パラ マリア
マリアにこのケーキを持ってきたよ。
Este regalo es para ti.
エステ レガーロ エス パラ ティ
このプレゼントはあなたのためのものです。
Vamos a comprar flores para mi madre.
バモス ア コンプラール フローレス パラ ミ マドレ
母のために花を買おう。
比較表現に関わるpara
para は「〜のわりに」「〜にしては」「〜なのに」というニュアンスを伝えることもできます。例えば「その年齢にしては大人びている」「平日のわりに(平日なのに休日のように)混んでいる」など、比較を表す使い方です。
Para tener solamente quince años, tu hermano es muy maduro.
パラ テネール ソラメンテ キンセ アニョス, トゥ エルマノ エス ムイ マドゥロ
まだ15歳なのに、君の弟は大人びているね。
Hay mucha gente en el bar para ser lunes.
アイ ムーチャ ヘンテ エン エル バル パラ セル ルネス
月曜日なのにバルにはたくさんの人(客)がいる。
Este vino es muy bueno para costar solo tres euros.
エステ ビノ エス ムイ ブエノ パラ コスタール ソロ トレス エウロス
このワインはたった3ユーロしかしないのに(3ユーロのわりに)品質はとても良い。
目的地や方向性に関するpara
【para+名詞】で目的地や行き先を表すことができます。例えば、voy para casa(ボイ パラ カサ)といえば「家へ行く」という意味になります。
Vete para allá.
ベテ パラ アジ
あっちへ行って。
¿De dónde sale el tren para Santander?
デ ドンデ サレ エル トレン パラ サンタンデール
サンタンデール行きの電車はどこから出ますか?
Mañana partimos para Córdoba.
マニャーナ パルティモス パラ コルドバ
明日私たちはコルドバに向かって出発します。
期限や締め切りに関するpara
【para+名詞】で期限や締め切りを表すことができます。例えば para el martes que viene(パラ エル マルテス ケ ビエネ)なら「次の火曜日が締め切り=次の火曜日までに」という意味です。
La tarea es para el martes que viene.
ラ タレア エス パラ エル マルテス ケ ビエネ
宿題は次の火曜日までだよ。
La obra tiene que estar terminada para el día de Navidad.
ラ オブラ ティエネ ケ エスタール テルミナーダ パラ エル ディア デ ナビダッ
その工事はクリスマスまでに完了しなければならない。
Necesito que me devuelvas el coche para la próxima semana.
ネセシート ケ メ デブエルバス エル コチェ パラ ラ プロキシマ セマナ
来週までに車を返してもらう必要があります。
実際の会話例で見るparaの表現方法
【比較表現のpara】
A:Tú pareces joven para tu edad. De verdad, pareces una niña.
トゥ パレセス ホーベン パラ トゥ エダッ. デ ベルダッ パレセス ウナ ニーニャ
あなたは年齢の割に若く見えるわ。本当にまだ子供のよう。
B: Quiero aparentar ser más adulta.
キエロ アパレンタール セル マス アドゥルタ
私だってもう少し大人っぽくなりたいわよ。
【対象を表すpara】
A:Yurika, aquí hay una oferta de trabajo muy buena para tí.
ユリカ, アキ アイ ウナ オフェルタ デ トラバホ ムイ ブエナ パラ ティ
ゆりか、あなたにとっていい求人があるわよ。
B: ¿Trabajo para mí? Me interesa, cuéntame.
トラバホ パラ ミ, メ インテレサ, クエンタメ
私向きの仕事?興味ある、教えて。
porとparaの使い分けのコツ
porとparaの間違いやすいポイント
こうして使い方を見てみると、por も para も表現のバリエーションが多いですね。でも「覚えることがたくさんあって難しそう」と身構えないでください。表現例やパターンを頭に入れてしまえば、応用は比較的簡単にできるはずです!
続いては、同じような表現でありながら意味が異なるという例文を見比べて、使い方の違いを覚えていきましょう。
¿Por qué? (ポル ケ)
¿Para qué? (パラ ケ)
日常的によく使われるこの2つの疑問形。どちらも疑問詞 qué(ケ)を使っていて「なぜ?」「どうして?」という意味です。日本語にすると同じ言葉で表せますが、質問の意図は違うので気をつけてください。
- ¿Por qué? =理由を聞く質問
- ¿Para qué? =目的を聞く質問
¿Por qué? は「どういう理由で?」と聞く表現であるのに対して、¿Para qué? は「何の目的で?」という疑問形。どうしてなのか原因を問うのが por 、何のためなのか目的を確認するのが para です。
似たような状況でも使い分けが必要な理由
por と para は同じような文章構成が使われることがあります。同じ単語を使っても、por なのか para なのかによってニュアンスが異なるため、その使い分けが必要です。
前述したそれぞれの役割を念頭に置いて、次の例文を読んでみてください。2つの文の意味の違いがわかりますか?
【例文1】
Luis ha comprado un coche grande por su hija. Ella toca el contrabajo.
ルイス ア コンプラード ウン コチェ グランデ ポル ス イハ. エジャ トカ エル コントラバホ
ルイスは(娘のことを考えて)大きな車を買った。コントラバス(大型の弦楽器)を弾く彼女ために必要だったからです。
※自分がなぜ大きな車を買ったのかの理由を説明している文
Luis ha comprado un coche grande para su hija. Se lo va a regalar a ella.
ルイス ア コンプラード ウン コチェ グランデ パラ ス イハ. セ ロ バ レガラール ア エジャ
ルイスは娘のために大きな車を買った。それを彼女にプレゼントするつもりだ。
※娘に車を買ってあげた(娘が受け取り手である)ことを表している文
【例文2】
Carlos tiene mucha experiencia por su edad.
カルロス ティエネ ムーチャ エクスペリエンシア ポル ス エダッ
カルロスは彼の年齢だからこそ多くの経験をしている。
※理由を表している文
Carlos tiene mucha experiencia para su edad.
カルロス ティエネ ムーチャ エクスペリエンシア パラ ス エダッ
カルロスは彼の年齢にしては多くの経験をしている。
※比較を表している文
【例文3】
María estará aquí por febrero.
マリア エスタラ アキ ポル フェブレロ
マリアは2月くらいにはここに来る(いる)はずだ。
※おおよその時期を表している文
María estará aquí para febrero.
マリア エスタラ アキ パラ フェブレロ
マリアは2月までにはここに来る(いる)はずだ。
※期限を表している文
【例文4】
Este autobús va por Marbella.
エステ アウトブス バ ポル マルベージャ
このバスはマルベージャを経由する。
※通過を表す文
Este autobús va para Marbella.
エステ アウトブス バ パラ マルベージャ
このバスはマルベージャ行きだ。
※行き先を表す文
porとparaを使った会話例
最後に por と para を織り混ぜた会話例をご紹介します。どこに2つの前置詞が使われているか、チェックしてください。
María: Cobro veinte euros por hora…Tres por veinte, sesenta…
コブロ ベインテ エウロス ポル オラ…トレス ポル ベインテ, セセンタ
時給20ユーロ、3×20で60ユーロか…
Yurika: Toma, aquí está la calculadora para tí. ¿Para qué estás haciendo esas cuentas?
トマ, アキ エスタ ラ カルクラドーラ パラ ティ. パラ ケ エスタス アシエンド エサス クエンタス
はい、電卓をどうぞ。何を計算しているの?
María: Estoy buscando un trabajo temporal para enero. Pero no hay buenas ofertas de trabajo.
エストイ ブスカンド ウン トラバホ テンポラル パラ エネロ. ペロノー アイ ブエナす オフェルタス デ トラバホ
1月のアルバイトを探しているの。でもいい求人がなくて。
Yurika: Todo es por culpa de la crisis económica. Pero, ¿para qué quieres hacer un trabajillo?
トド エス ポル クルパ デ ラ クリシス エコノミカ. ペロ, パラ ケ キエレス アセール ウン トラバヒージョ
不景気のせいね。でも、何のためにアルバイトをするの?
María: Para viajar por Italia en verano. Para mí es un viaje de lujo.
パラ ビアハール ポル イタリア エン ベラーノ. パラ ミ エス ウン ビアヘ デ ルホ
夏にイタリア周遊の旅行をするため。私にとっては贅沢な旅だから。
Yurika: ¡Qué bien! Pero ese viaje seguro que cuesta bastante.
ケ ビエン. ペロ エセ ビアヘ セグロ ケ クエスタ バスタンテ
素敵!でもその旅行は絶対高くつきそうね。
María: Por eso busco un trabajo, por si acaso. Mis ahorros no serán suficientes.
ポル エソ ブスコ ウン トラバホ, ポル シー アカスコ. ミス アオロス ノー セラン スフィシエンテス
だから念のために仕事を探しているの。私の貯金では足りないかもしれないもの。
Yurika: Si trabajas unos meses, para el verano ya habrás ahorrado bastante.
シー トラバハス ウノス メセス, パラ エル ベラーノ ジャ アブラス アオラード バスタンテ
数カ月か働けば、夏までにはだいぶ貯金ができるわよ。
まとめ
今回はスペイン語の前置詞 por と para の違いと使い方をまとめました。
今後勉強しながらまたわからなくなってしまったら、このページに戻ってもう一度見直してみてくださいね。さまざまな表現方法があるので、何度でも繰り返しながら覚えていきましょう!