街を歩いていてパン屋さんから漂う焼きたての香り、レストランのメニューで見かける色鮮やかな料理の写真、友人宅で振る舞われた手料理…。五感を刺激する「食」に関する場面で、「わぁ、美味しそう!」と思わず口にすることは多いですよね。この素直な感情をスペイン語で表現できたら、コミュニケーションはもっと豊かになります。
スペイン語には、「美味しそう」を表す表現がいくつもあり、見た目、匂い、あるいは我慢できないほどの食欲など、状況によって使い分けられます。さらに、食べ物を使った面白いイディオム(慣用句)もたくさん存在します。
今回は、様々な「美味しそう」のスペイン語表現から、実際に「美味しい!」と伝える言葉、そして知っていると会話がもっと楽しくなる食に関するイディオムまで、詳しくご紹介します!
スペイン語で表現する美味しさ:「おいしそう」から「絶品!」、食のイディオムまで
目次
- 1 シチュエーション別!「美味しそう」のスペイン語表現
- 2 実際に食べて「美味しい!」と伝える表現
- 3 知ってると面白い!食べ物を使ったスペイン語イディオム
- 3.1 Para postre (パラ ポストレ) – しかも、おまけに(悪い意味で)
- 3.2 No tener ni media galleta (ノ テネール ニ メディア ガジェタ) – (肉体的に)弱い
- 3.3 Sacar(le) chocolate a alguien (サカール(レ) チョコラテ ア アルギエン) – (人)に鼻血を出させる
- 3.4 Descubrir(se) el pastel (デスクブリール(セ) エル パステル) – 秘密がばれる、悪事が露見する
- 3.5 Ser pan comido (セール パン コミード) – 朝飯前である、簡単なことである
- 3.6 Importar un pepino / rábano / pimiento (インポルタール ウン ペピーノ / ラバノ / ピミエント) – 全くどうでもいい
- 3.7 Dar calabazas a alguien (ダール カラバサス ア アルギエン) – (人)を振る、(試験に)落第させる
- 4 食に関する表現を使いこなす練習方法
- 5 まとめ:食の表現でスペイン語をもっと豊かに!
シチュエーション別!「美味しそう」のスペイン語表現
「美味しそう」と感じるきっかけは様々です。見た目なのか、香りなのか、あるいは想像してよだれが出そうなのか… 状況に合わせてぴったりの表現を使ってみましょう。
見た目が美味しそう!: ¡Qué buena pinta tiene! / Se ve rico
目で見て「美味しそう!」と感じた時に使える表現です。
¡Qué buena pinta tiene (esta paella)!
(ケ ブエナ ピンタ ティエネ (エスタ パエジャ)!)
(このパエリア、)なんて美味しそうな見た目なんだ!
「pinta」は「外観、見た目」という意味。「tener buena pinta」で「見た目が良い、美味しそうに見える」という定番の言い回しです。「Qué + 形容詞/名詞」は「なんて〜なんだ!」という感嘆表現。
Se ve rico / delicioso.
(セ ベ リコ / デリシオソ)
美味しそうに見えるね。
「verse」は「〜に見える」という意味の動詞。「rico(おいしい)」や「delicioso(とてもおいしい)」といった形容詞と組み合わせて使います。主語が複数の場合は「Se ven ricos/deliciosos.」となります。

¡Qué buena pinta tienen estos pasteles! (これらのケーキ、なんて美味しそうなの!)
香りが美味しそう!: ¡Qué bien huele! / Huele rico
漂ってくる香りに食欲をそそられた時に使う表現です。
¡Qué bien huele!
(ケ ビエン ウエレ!)
なんて良い匂いなんだ! / 美味しそうな匂い!
「oler(オレール)」は「匂いがする」という不規則動詞で、三人称単数形が「huele」。「bien(良く)」と一緒に使うことで「良い匂いがする」となります。「Qué」をつけると感嘆の意味が強まります。
Huele rico / delicioso.
(ウエレ リコ / デリシオソ)
美味しそうな匂いがするね。
Huele que alimenta.
(ウエレ ケ アリメンタ)
(栄養がありそうなほど)食欲をそそる良い匂いだ。
「alimentar」は「栄養を与える、養う」という意味。匂いだけで栄養がつきそうなくらい、たまらなく美味しそうな香りであることを表現する、スペイン語らしい言い回しです。
よだれが出そう!: Se me hace agua la boca
見たり、匂いを嗅いだり、あるいは想像したりして、思わず口の中に唾液が溢れてくるような、強い食欲を感じた時の表現です。
Se me hace agua la boca (solo de pensarlo).
(セ メ アセ アグア ラ ボカ (ソロ デ ペンサルロ))
(考えただけで)よだれが出ちゃうよ。/ たまらなく美味しそう!
直訳は「私の口が水になる」。非常に口語的で、強い欲求を表します。「me」の部分は、他の人称(te, le, nos, os, les)に変えることもできます。

¡Esta pizza…! Se me hace agua la boca. (このピザ…!よだれが出ちゃうよ。)
その他:「お腹が空いてきた」「〜そうだね」
Me está entrando hambre (al verlo / al olerlo).
(メ エスタ エントランド アンブレ (アル ベルロ / アル オレルロ))
(それを見たら / 匂いを嗅いだら)お腹が空いてきたよ。
「entrar hambre」で「お腹が空く」という意味。「estar + 現在分詞」で進行形になっています。
Parece delicioso / rico / bueno.
(パレセ デリシオソ / リコ / ブエノ)
美味しそうだね。
「parecer」は「〜のように見える、〜そうだ」という意味の動詞。見た目や状況から判断して「美味しそうだ」と推測する時に使います。
会話で見る「美味しそう」
新しい家はどう?もう落ち着いた?
うん、広いしとても気に入ってるわ。でも一つだけ深刻な問題があってね。
どうしたの?
それがね、近所にピザ屋さんがあって毎晩すごくいい匂い (olor tan rico) がうちまで届くの。誘惑的で耐えられないくらい。
なんだ、本当に深刻な問題かと思ったらそんなことね。それで、ピザもう試したの?
すごくお腹が空いてた日に匂いを嗅いでもうよだれが出てくるくらいで、我慢できなかったの。宅配で頼んだの。すごく美味しかったわ。
美味しかったとなるとさらに匂いが誘惑になるんじゃない?
実際に食べて「美味しい!」と伝える表現
「美味しそう!」と感じたものを実際に食べてみて、その美味しさを相手に伝える時の表現も覚えておきましょう。感動の度合いによって使い分けられます。
定番の「美味しい!」: ¡Qué rico! / ¡Está riquísimo!
¡Qué rico! / ¡Está (muy) rico!
(ケ リコ! / エスタ (ムイ) リコ!)
¡Está riquísimo!
(エスタ リキッシモ!)
おいしい! / とてもおいしい!
「rico」は「おいしい」を意味する最も一般的でよく使われる形容詞です。「Qué rico!」は感嘆文、「Está rico」は「(食べてみたら)おいしい」という状態を表します。「muy(とても)」や絶対最上級の「-ísimo」をつけて強調できます。主語が女性名詞なら「rica/riquísima」、複数なら「ricos/ricas/riquísimos/riquísimas」と性数一致します。
Rico と同じくらい使える: ¡Qué bueno! / ¡Está buenísimo!
¡Qué bueno! / ¡Está (muy) bueno!
(ケ ブエノ! / エスタ (ムイ) ブエノ!)
¡Está buenísimo!
(エスタ ブエニッシモ!)
おいしい! / とてもおいしい! / うまい!
「bueno」も「おいしい」という意味で、「rico」とほぼ同じように非常によく使われます。こちらも性数一致(buena/buenos/buenas, buenísima/buenísimos/buenísimas)します。
少し丁寧・上品に: Delicioso / Está delicioso
Delicioso / Está delicioso
(デリシオソ / エスタ デリシオソ)
美味、おいしい(上品な響き)
英語の “delicious” にあたり、「rico」や「bueno」よりも少し丁寧で上品な響きがあります。レストランでの感想や、目上の人の手料理を褒める時などに使うと良いでしょう。こちらも性数一致(deliciosa/deliciosos/deliciosas)します。
風味豊かさを褒める: Sabroso / Está sabroso
Sabroso / Está sabroso
(サブロソ / エスタ サブロソ)
風味豊かでおいしい、味わい深い
「sabor(味、風味)」から派生した言葉で、味や香りが豊かで美味しいことを表します。特に煮込み料理やソースなど、複雑な味わいの料理に対して使うとぴったりです。性数一致(sabrosa/sabrosos/sabrosas)します。
最上級の褒め言葉: Exquisito / Está exquisito
Exquisito / Está exquisito
(エクスキシート / エスタ エクスキシート)
絶品、極上の味
英語の “exquisite” にあたり、非常に洗練された、格別な美味しさを表す最上級の褒め言葉です。高級レストランの料理や、特別な料理に対して使うと良いでしょう。性数一致(exquisita/exquisitos/exquisitas)します。
知ってると面白い!食べ物を使ったスペイン語イディオム
スペイン語には、食べ物を使ったユニークなイディオム(慣用句)がたくさんあります。会話の中で自然に使えると、スペイン語がぐっとネイティブらしく聞こえますよ!
Para postre (パラ ポストレ) – しかも、おまけに(悪い意味で)
直訳:「デザートのために」
意味:その上、しかも、挙げ句の果てに(通常、良くないことが重なった時に使う)
例文:Perdí el tren y, para postre, empezó a llover.
(ペルディ エル トレン イ, パラ ポストレ, エンペソ ア ジョベール)
電車に乗り遅れて、おまけに雨まで降り出した。
食事の最後にデザートが出てくるように、悪いことの「締めくくり」として、さらに悪いことが起こった時に使います。
No tener ni media galleta (ノ テネール ニ メディア ガジェタ) – (肉体的に)弱い
直訳:「クッキー半分さえ持っていない」
意味:(人が)ひ弱である、体力がない、根性がない
例文:Después de correr un poco, ya estaba agotado. Es que no tengo ni media galleta.
(デスプエス デ コレール ウン ポコ, ジャ エスタバ アゴタード. エス ケ ノ テンゴ ニ メディア ガジェタ.)
少し走っただけで、もうヘトヘトだよ。だって僕、体力ないんだもん。
クッキー半分ほどの力もない、というイメージから。「galleta(クッキー)」の代わりに「torta(ケーキ)」が使われることもあります。
Sacar(le) chocolate a alguien (サカール(レ) チョコラテ ア アルギエン) – (人)に鼻血を出させる
直訳:「(人)からチョコレートを取り出す」
意味:(人を殴るなどして)鼻血を出させる
例文:En la pelea, le sacó chocolate de un puñetazo.
(エン ラ ペレア, レ サコ チョコラテ デ ウン プニェタソ.)
喧嘩で、彼は一発殴って相手に鼻血を出させた。
主に中南米で使われる表現。鼻血の色がチョコレートに似ているから、という説があります。
Descubrir(se) el pastel (デスクブリール(セ) エル パステル) – 秘密がばれる、悪事が露見する
直訳:「ケーキが見つかる / を発見する」
意味:隠し事や悪事がばれる、陰謀などが明らかになる
例文:Al final, se descubrió el pastel y supimos que él nos había mentido.
(アル フィナル, セ デスクブリオ エル パステル イ スピモス ケ エル ノス アビア メンティード.)
最終的に、秘密がばれて、彼が私たちに嘘をついていたことが分かった。
「pastel」には「パイ、ケーキ」の他に「陰謀、不正行為」といった意味もあります。
Ser pan comido (セール パン コミード) – 朝飯前である、簡単なことである
直訳:「食べられたパンである」
意味:(物事が)非常に簡単である、たやすいことである
例文:Este examen es pan comido para ti, ¿verdad?
(エステ エクサメン エス パン コミード パラ ティ, ベルダッ?)
この試験、君にとっては朝飯前でしょ?
パンは日常的な食べ物であり、食べるのが簡単であることから来ています。

Ser pan comido – とっても簡単!
Importar un pepino / rábano / pimiento (インポルタール ウン ペピーノ / ラバノ / ピミエント) – 全くどうでもいい
直訳:「キュウリ / 大根 / ピーマンほどの重要性しかない」
意味:全く重要でない、どうでもいい、気にならない
例文:Lo que él diga me importa un pepino.
(ロ ケ エル ディガ メ インポルタ ウン ペピーノ.)
彼が何を言おうと、私には全くどうでもいい。
安価でどこにでもある野菜に例えて、価値がない、重要でないことを表します。「pepino(キュウリ)」が最も一般的ですが、「rábano(大根)」や「pimiento(ピーマン)」も使われます。
Dar calabazas a alguien (ダール カラバサス ア アルギエン) – (人)を振る、(試験に)落第させる
直訳:「(人)にカボチャを与える」
意味:(異性からの誘いや求愛を)断る、振る。または(学生を)試験で不合格にする。
例文1:Le pedí salir, pero me dio calabazas.
(レ ペディ サリール, ペロ メ ディオ カラバサス.)
彼女にデートを申し込んだけど、振られたよ。
例文2:El profesor nos dio calabazas en el examen final.
(エル プロフェソール ノス ディオ カラバサス エン エル エクサメン フィナル.)
先生は期末試験で私たちを落第させた。
由来には諸説ありますが、昔、求婚を断る印としてカボチャを送った習慣があったとも言われています。
食に関する表現を使いこなす練習方法
これらの表現を自然に使えるようになるには、やはり練習が大切です。
- 食べ物を見たり匂いを嗅いだら口に出す: スーパーで、レストランで、友人の家で…美味しそうなものに出会ったら、意識して「¡Qué buena pinta!」「¡Huele rico!」などと声に出してみましょう。
- 食事中に感想を言う: 実際に食べてみて、「¡Qué rico!」「Está delicioso」など、味の感想を具体的に伝える練習をします。一緒にいる人に「¿Está rico?(おいしい?)」と聞いてみるのも良いでしょう。
- イディオムを使ってみる: 覚えたイディオムを、まずは簡単な文脈で使ってみましょう。「Este trabajo es pan comido.(この仕事は楽勝だ)」のように。少しずつ自然な会話の中で使えるように練習します。
- 食文化に触れる: スペイン料理やラテンアメリカ料理のレシピを見たり、実際に作ってみたり、レストランで食べたりする中で、関連する単語や表現に触れる機会を増やしましょう。
まとめ:食の表現でスペイン語をもっと豊かに!
スペイン語の「美味しそう」には、見た目、香り、食欲の度合いに応じて様々な表現があることが分かりましたね。「¡Qué buena pinta!」「¡Qué bien huele!」「Se me hace agua la boca」などを使い分けて、あなたの感動を伝えてみてください。そして実際に食べた後は、「¡Qué rico!」「¡Delicioso!」といった言葉で美味しさを表現しましょう。
また、「Para postre」や「Ser pan comido」のような食べ物を使ったイディオムは、スペイン語の面白さや文化を垣間見せてくれます。少しずつ覚えて会話に取り入れてみると、きっとコミュニケーションがもっと楽しくなるはずです。
食は万国共通の楽しみ。食に関する豊かなスペイン語表現をマスターして、スペイン語圏の人々との交流をさらに深めていきましょう!