スペインで人気のある名前やその由来、キリスト教との関連性、苗字の特徴などについて説明されています。また、スペイン語での名前の省略形や呼び方、聖人に関連した記念日なども紹介されています。
スペインの名前の文化と伝統・人気の名前とその背後にある理由
目次
スペインで人気の名前とその背後にある理由
スペインの国立統計局によると、2021年の子供の名前人気ナンバーワンは、女の子がルシア(Lucía)、男の子はマルティン(Martín)でした。いずれも、長年ランクインし続けている定番の名前です。
その他、ランキング10位までは、以下の通りとなっています。
スペインの名前 人気ランキング トップ10
女の子の名前ランキング
- 1位:Lucía(ルシア)
- 2位:Martina(マルティーナ)
- 3位:Sofía(ソフィア)
- 4位:María(マリア)
- 5位:Valeria(バレリア)
- 6位: Julia(フリア)
- 7位: Paula(パウラ)
- 8位: Emma(エンマ)
- 9位: Daniela(ダニエラ)
- 10位:Carla(カルラ)
男の子の名前ランキング
- 1位:Martín(マルティン)
- 2位:Hugo(ウゴ)
- 3位:Mateo(マテオ)
- 4位:Leo(レオ)
- 5位:Lucas(ルーカス)
- 6位:Manuel(マヌエル)
- 7位:Daniel(ダニエル)
- 8位:Alejandro(アレハンドロ)
- 9位:Pablo(パブロ)
- 10位:Enzo(エンソ)
※Instituto Nacional de Estadística (スペイン国立統計局)による2021年のデータです。
スペインの名前はキリスト教と関連している!?
人気の名前は、ほとんどがキリスト教に由来しています。
スペインでは、キリスト教の聖人歴により「聖パウラの日」「聖マリアの日」「聖ジョルディの日」など、名前に関連した記念日があります。
その日に誕生した子供に記念日の名前を付けることもあれば、両親や祖父母の名を引き継いで誕生日に関係なく同じ名前を授けることもよくあります。そんな伝統的な名前を持つ人が非常に多いのです。
スペインの名前の由来と意味
神のご加護を祈り、聖人と同じ名に…
なぜスペインでは聖人の名前を付ける親が多いのかというと、その名前を持つ聖人に子供を守ってもらおうという願いが込められているからです。
他にはない個性的な名前を付けるより、誰もが知る聖人の名を付けることのほうが、一般的には主流。
同じ聖人の名前を持つ人は数多く、マリア、フリア、ルルデス、ウゴ、ダニエル、アレハンドロなどは、学校や会社に2〜3人いることもあります。
代表的なキリスト教の聖人名とその意味
Antonio アントニオ
聖人パドヴァのアントニオに由来する名前。愛、結婚、縁結び、老人、動物の聖人とされています。
Miguel ミゲル
天使ミカエルに由来する名前。「神と似た者」という意味を持っています。
María マリア
聖母マリアに由来する名。マリアという1つの名前だけではなく、マリア・テレサ、マリア・デル・カルメン、マリア・ホセ、マリア・アンヘルなど、マリアを組み合わせた複数の名前を持つ人も数多くいます。
José ホセ
イエス・キリストの育ての親ヨセフをスペイン語名にしたのが、ホセです。日常ではホセという名前は「ペペ」と呼ばれることもあります。
それはホセがキリストの実の父ではなく推定上の父(=Pater Putativus )であるから、この言葉の頭文字PPをとって「ペペ」と呼ばれるようになりました。
Lucía ルシア
イタリア語では「ルチア」と呼ばれているキリスト教の聖人。暗闇を照らす光の守護神です。
その他のスペイン語名
Jesús ヘスス
ヘススは、イエス・キリストを表すスペイン語名。「神の救い」という意味を持っています。
Angel/Angela アンヘル/アンヘラ
アンヘルとは、天使という意味を持つ名前です。男性名ではアンヘル( Angel )、女性名ではアンヘラ( Angela )となります。
男女によって違う、同じ名前の性変化
スペイン語には男性名詞、女性名詞があり、名前もまた男性、女性によって形を変えます。 同じ由来を持つ名前でも、語尾が少し異なってくるのです。
例えば、男の子ならダニエル( Daniel )、女の子ならダニエラ( Daniela )。アレハンドロ( Alejandro )という名前は、女の子に付ける時にはアレハンドラ( Alejandra )となります。
代々名前を引き継ぐのも一般的
聖人の名は、親子や家族で代々受け継がれていくことがあります。親子で同じ名前、お婆ちゃんやお爺ちゃんと孫が同じ名前、という家族は少なくありません。
例えば、息子、父親、祖父の3世代がみんな「ミゲル」と名付けられている場合も。それだけ、聖人の名を大事にしているんですね。
スペインの名前の特徴と日本との比較
スペインの名前には苗字が2つある
日本では結婚すると夫婦が同じ苗字になりますが、スペインでは結婚後にも苗字が変わらず、どの夫婦も別姓です。
では子供の苗字はどうなるのかというと、子供たちは父親、母親それぞれの苗字を両方引き継ぎます。そのため、スペインの人たちは2つの苗字を持っています。
例えば、スペインの有名女優ペネロペ・クルスは、本名がペネロペ・クルス・サンチェス。クルスとサンチェスの2つが苗字です。
もしも、ゴンザレス・フェルナンドさんという人と、ペドロ・パウラさんという名前の人がいたとして、2人が結婚して子供にホセという名前を付けた場合、子供はゴンザレス・ペドロ・ホセとなります。
親の2つの苗字のうち各1つを引き継ぐわけですが、どの苗字を第1苗字とするかは選択が可能です。
名前を複数付けてもOK
苗字2つに加えて、名前が2つある人たちも中にはいます。ミドルネームは普段日常的に使われることはほとんどありませんが、本名として登録されている場合も。名前の数に制限があるわけではないので、3つでも、それ以上でも名付けることができます。
例えば、スペインの有名画家ピカソの本名をご存知ですか?彼の出生証明書による名は…
パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・シプリアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ。
なんと、こんなにも長い名前の持ち主です。
スペイン語で名前を表す時の順番
スペインでは、最初に名前、次に苗字の順番で表記します。苗字は apellido 、名前は nombre 。
山田太郎さんだったら、スペイン語表記では Taro Yamada 。ホテルの予約や何かの書類に記名する時、苗字と名前の順番を間違えないように気をつけてください。
スペイン人の名前の省略形
多くの人が本名とは異なる呼び名を使っている
スペイン人の知り合いが増えていくと、ペペ、ナチョ、ベアといった名前を持つ人に出会うことがきっとあるでしょう。
これらはとてもポピュラーで、知り合いに1人はいるという名前です。しかし、いずれも本名ではありません。
Pepe(ペペ)は José(ホセ)、Nacho (ナチョ)は(イグナシオ)、Bea(ベア)は Beatriz(ベアトリス)の省略形です。いわゆる呼び名で、一般的に家族や友人たちの間で日常使われています。
省略形で呼ばれている人は多く、気軽に話せる相手であればその呼び名で通して問題ありません。ただ、ビジネスシーンなどでは、本名とは違うということも知っておくといいですね。
代表的なスペイン語の名前の省略形
(名前の省略形=本名)
- Pepe(ペペ)= José(ホセ)
- Paco(パコ)= Francisco(フランシスコ)
- Nacho(ナチョ)= Ignacio(イグナシオ)
- Guille(ギジェ)= Guillermo(ギジェルモ)
- Bea(ベア)= Beatriz(ベアトリス)
- Lola(ロラ)= Dolores(ドローレス)
- Maite(マイテ)= María Teresa(マリア・テレサ)
- Mamen(マーメン)= María del Carmen(マリア・デル・カルメン)
子供や親しい間柄での名前の呼び方 〜スペイン語の指小辞〜
前述したようにスペインでは家族で代々同じ名前を引き継いでいる場合があるのですが、そうすると混乱しないだろうかと疑問に思いませんか?
実際は、同じ名前でも小さい子供や親しい間柄では少し違った呼び方をします。
例えば「ミゲル( Miguel )」という名前の子供を呼ぶ時には「ミゲリート( Miguelito )」に。この語尾にある –ito とは指小辞で、語尾を変えることで同じ名前でも誰に対してなのか把握できるというわけです。
スペイン語の指小辞 –ito/-ita
–ito/-ita
指小辞とは名詞や形容詞に付き、「小さい」「少し」という意味をもたらせる接辞です。
男性名詞なら語尾が –ito に、女性名詞なら語尾が –ita となり、小さいことを表すほかに「かわいい」「愛らしい」というニュアンスもあります。
スペインでは、子供や親しい間柄の相手を呼ぶ時に、この指小辞を使います。
(指小辞を使った名前:本名- 指小辞が付いた名前)
- Pablo(パブロ) – Pablito(パブリート)
- Luis(ルイス) – Luisito(ルイシート)
- Jorge(ホルヘ) – Jorgito(ホルヒート)
- Carlos(カルロス) – Carlitos(カルリートス)
- Ana(アナ) – Anita(アニータ)
- Elena(エレナ) – Elenita(エレニータ)
- Mercedes(メルセデス) – Merceditas(メルセディータス)
スペイン人との名前に関するやりとり
ビジネスシーンでも親しい間柄なら呼び捨て
スペインでは呼び捨てが基本です。
子供たちが担任の先生を呼ぶ時、仕事の同僚や上司と話す時、結婚相手の義両親に声をかける時など、親しい間柄では年上であろうと立場が違っていようと呼び捨て。
苗字で呼ぶことはまずなく、名前で呼び合います。
自己紹介の仕方と相手の呼び方
お互いを名前で呼び合うのが当たり前であるゆえに「仲良くしている相手の苗字を実は知らない…」なんてこともたまにあります。
なぜなら、自己紹介をする時に名前だけを伝えることが多いからです。
【スペイン語で自分の名前を紹介するフレーズ】
Soy Makoto.
ソイ マコト
私はマコトです
Me llamo Makoto.
メ ジャモ マコト
私の名前はマコトです
初めて会う人に自分の名前を伝える時には、このように表現します。
スペイン語の名前の敬称
名前を呼び捨てするのが一般的だとはいえ、誰に対しても呼び捨てで良いわけではありません。
初対面の相手、親しい間柄ではない目上の相手、お客さんなどは、敬称を付けて呼びます。
【男性に対する敬称】
señor (Sr.) セニョール
【既婚女性に対する敬称】
señora (Sra.) セニョーラ
【未婚女性に対する敬称】
señorita (Srta.) セニョリータ
手紙やメールでは、Sr./Sra./Srta.というように省略形で表します。
セニョーラとセニョリータの違いは、実際の既婚、未婚に合わせて分類されているわけではありません。
若い女性に対して、または、ある程度年齢を重ねている女性に対しても、若さを象徴するセニョリータを使います。
年配の女性であれば、敬意を込めてセニョーラと呼ぶのが良いでしょう。
名前に関連した記念日:スペインの文化と伝統
365日、名前に関わる記念日がある
スペインでは365日、毎日聖人の日が定められています。例えば1月26日はパウラの日、4月23日はホルヘの日。
このように全ての日が聖人を祝う日であり、その名前が記された「聖人カレンダー」というものがあります。
代表的な聖人の日
- 1月26日 Santa Paula サンタ パウラ
- 2月23日 Santa Ágatha サンタ アガタ
- 3月19日 San José サン ホセ
- 4月23日 San Jorge サン ホルヘ
- 5月3日 San Felipe サン フェリペ
- 6月14日 San Juan サン フアン
- 7月21日 San Daniel サン ダニエル
- 8月23日 Santa Rosa サンタ ロサ
- 9月12日 Santa María サンタ マリア
- 10月4日 San Francisco サン フランシスコ
- 11月15日 San Alberto サン アルベルト
- 12月13日 Santa Lucía サンタ ルシア
Santo/Santa とは「聖」という意味です。男性名の聖人なら santo、女性名の聖人なら santa という単語が名前の前に付きます。地域によってそれぞれの守護聖人がいて、守護聖人の日にはその地域の祝日となります。
日本では祝日が全国同じ日・同じ日数ですが、スペインでは各地の聖人の日に由来した祝日があるため、地域ごとに異なります。
同じ県内に住んでいても「隣の市とは祝日が違う」というのもスペインの特徴です。
聖人と同じ名前を持つ人たちの祝い方
聖人と同じ名前を持っている人たちにとっては、その聖人の日は誕生日と同じようにめでたい記念日です。そのため、家族や友人など周囲の人たちは、聖人と同じ名前の人をお祝いします。
花やプレゼントを贈ったり、子供ならお菓子をあげたり、みんなで一緒に楽しむ特別な日です。
【聖人の日を祝うスペイン語のフレーズ】
¡Felicidades!
フェリシダーデス
おめでとう!
¡Felicidades! は、誕生日にも使う祝福の言葉です。聖人の名前を持つ人には、誕生日と同様に、このようにお祝いの言葉をかけます。
スペインの名前に関する会話例
最後に、名前に関するスペイン語の会話例を見てみましょう。
Satoshi:Hola. Encantado de conocerte. Me llamo Satoshi.
初めまして。僕はサトシです。
Paula:Encantada, Satoshi. Yo me llamo Paula. Satoshi es un nombre Japonés, ¿no?
初めまして、サトシ。私はパウラです。「サトシ」というと、日本の名前ですか?
Satoshi:Sí, soy japonés. Vivo en España desde hace dos años.
そうです、僕は日本出身です。2年前からスペインに住んでいます。
Paula:Pues hablas español muy bien.
スペイン語が上手ですね。
Satoshi:Gracias. Tuve una buena profesora. Por cierto, también se llama Paula. Qué casualidad, ¿verdad?
ありがとうございます。いい先生に教えてもらっているので。そういえば、その先生もパウラという名前なんですよ。偶然ですね。
Paula:Bueno, en realidad Paula es un nombre muy común en España. Si pasas mucho tiempo aquí, conocerás a más personas con ese nombre.
そうね、実際はパウラという名前はスペインではよくあるから。ここで暮らしていたら、同じ名前の人とさらに出会うと思うわよ。
Satoshi:¿Qué significa el nombre de Paula?
パウラという名前には、どんな由来があるんですか?
Paula:Mis padres me lo pusieron porque nací el día veintiséis de enero, que es el día de Santa Paula.
私は1月26日の聖パウラの日に生まれたから、両親がパウラと名付けたみたい。
Satoshi:Entonces, de las niñas que nacen el veintiséis de enero, hay muchas que se llaman Paula, ¿no?
といことは、1月26日生まれの女の子はパウラという名前が多いんですかね。
Paula:Es posible.
そうかもしれない。
Satoshi:Le voy a preguntar a mi profesora cuándo es su cumpleaños.
今度先生に誕生日を聞いてみよう。
【ここに注目!】
¿Qué significa el nombre de Paula?
ケ シグニフィカ エル ノンブレ デ パウラ
¿Qué significa el nombre de ◯◯? は「◯◯という名前の由来(意味)は何ですか?」とたずねるフレーズです。
初めて会う人から、このように質問されることもあるので、あなたの名前の意味や由来がスペイン語で説明できるように練習しておくと良いでしょう。
まとめ
スペインで一般的な名前や命名規則、キリスト教との関係性について詳しく説明されています。また、スペイン語での名前の省略形や呼び方、聖人に関連した記念日なども紹介されており、スペイン人とコミュニケーションを取る際に役立つ情報が含まれています。
スペインの名前は、日本ほどモダンに変化したり、流行りに左右されたりはしていません。むしろ、多くの両親が定番の名前を好むため、同じ名前の人が同じ職場、同じクラス、同じ住まいのエリアに何人もいます。
スペイン人の知り合いができれば、あなたもきっと今回ご紹介した名前を持つ人に出会うことでしょう。