今回のテーマは「行く」という意味のスペイン語 ir と、形が似ている irse について。どちらも日常のあらゆるシーンで使われる大切な単語ですが、どのような違いがあるのでしょうか。
具体的な例を見ながら使い分けと注意点を解説していきます。
スペイン語のirとirseを使い分けよう!日常会話における表現の違いと注意点
目次
「行く」を表すスペイン語表現:ir と irse の違いは?
ir と irse はどちらもスペイン語の動詞です。といっても、irse は“再帰動詞”であるという点が文法的には異なります。ここで少し再帰動詞の役割をおさらいしておきましょう。
irse は再帰動詞
再帰動詞とは「ある行為や動作がその行為者から発せられ、行為者自身に戻ってくる場合の動詞」と定義されています。
動詞の主語と、その動作を受ける目的語が一致しているわけですが、この説明だけではちょっとわかりにくいかもしれませんね。では、具体例を見てみてください。
例えば、動詞 duchar(ドゥチャール)は「シャワーを浴びせる」という意味であるのに対して、再帰動詞 ducharse(ドゥチャールセ) は「シャワーを浴びる」という意味になります。
lavar los plato(ラバール ロス プラトス)は「自分が食器を洗う」という意味で、「自分が自分の手を洗う」という時には再帰動詞であるlavarse を使って lavarse las manos(ラバールセ ラス マノス)に。
このように動作や作用が自分自身に返ってくる時に使われるのが再帰動詞です。
【主なスペイン語の再帰動詞】
動詞−再帰動詞
- vestir「服を着せる」— vestirse「服を着る」
- probar「試す」— probarse「試着する」
- despertar「目覚めさせる」— despertarse「目覚める」
再帰動詞には末尾に se が付きます。この se の部分は再帰代名詞であり、誰がその行為をしているかという主語によって形が変わります。人称変化については以下の irse の項目で具体的に解説しますので参考にしてください。
続いては、今回のテーマである ir と irse の違いについて詳しく見ていきましょう。
ir:行く
ir は「行く」という意味の動詞です。どこか特定の目的地へ向かう時や、何かの目的がある時に使います。
ir の意味と使い方
特定の地点や方向に「行く」「向かう」「移動する」という時に動詞 ir を用いて表します。ir には他の役割もあるのですが、今回は irse との違いについて理解するため「行く」という意味にだけ着目してみましょう。
ir は移動の目的地を示す場合は前置詞 a を、移動の方向を示す時には前置詞 hacia を伴います。
例えば「私はソル駅へ行く」と言うなら Voy a la estación de Sol(ボイ ア ラ エスタシオン デ ソル)、「私はソル駅方面へ向かう」と言う時には Voy hacia la estación de Sol(ボイ アシア ラ エスタシオン デ ソル)となります。
ir の活用
スペイン語の動詞には直説法(現在形・点過去形・線過去形・未来形・過去未来形)・接続法(現在形・過去形)・命令形・現在分詞・過去分詞と活用の種類が数多くあります。
動詞の原形が規則的に変化するものは「規則動詞」に分類されますが、 ir は人称によって独自の変化をする「不規則動詞」です。
ir を使った文章を作ったり、または ir が使われた文章を理解したりするには、不規則に変化する ir の活用を知っておかなければなりません。ここでは、日常会話で使う頻度が高い現在形、点過去形、未来形の活用変化をおさらいしておきましょう。
【直説法現在形】
- (私)voy
- (君)vas
- (彼/彼女/あなた)va
- (私たち)vamos
- (君たち)vais
- (彼たち/彼女たち/あなたたち)van
Voy a la oficina de correos hoy.
ボイ ア ラ オフィシーナ デ コレオス オイ
私は今日郵便局へ行く。
【点過去形】
- (私)fui
- (君)fuiste
- (彼/彼女/あなた)fue
- (私たち)fuimos
- (君たち)fuisteis
- (彼たち/彼女たち/あなたたち)fueron
Fui a la oficina de correos ayer.
フイ ア ラ オフィシーナ デ コレオス アジェール
私は昨日郵便局へ行った。
【未来形】
- (私)iré
- (君)irás
- (彼/彼女/あなた)irá
- (私たち)iremos
- (君たち)iréis
- (彼たち/彼女たち/あなたたち)irán
Iré a la oficina de correos mañana.
ボイ ア ラ オフィシーナ デ コレオス マニャーナ
私は明日郵便局へ行く。
ir を使った例文
次の例文はいずれも、ある地点やある目的に向かって「行く」という意味で動詞 ir を使っています。
Voy a comprar.
ボイ ア コンプラル
買い物へ行く。
Mi abuela tenía la costumbre de ir a la iglesia todos los domingos.
ミ アブエラ テニア ラ コストゥンブレ デ イル ア ラ イグレシア トドス ロス ドミンゴス
毎週日曜日に教会へ行くのが祖母の習慣だ。
Ella va a la universidad en tren todos los días.
エジャ バ ア ラ ウニベルシダッド エン トレン トドス ロス ディアス
彼女は毎日電車で大学に通学している。
Carlos fue ayer a Barcelona.
カルロス フエ アジェール ア バルセロナ
カルロスは昨日バルセロナへ行った。
El próximo mes irá a la embajada a renovar su pasaporte.
エル プロキシモ メス イラ ア ラ エンバハーダ ア レノバール ス パサポルテ
彼は来月パスポートの更新をするために大使館へ行くつもりだ。
¿A dónde vas?
ア ドンデ バスどこへ行くの?
¿Fuisteis a hacer el examen de español la semana pasada?
フイステイス ア アセール エル エクサメン デ エスパニョール ラ セマナ パサーダ
あなたたちは先週スペイン語のテストを受けに行ったのですか?
¿Te gustaría ir a ver una película conmigo el próximo mes?
テ グスタリア イル ア ベル ウナ ペリクラ コンミーゴ エル プロキモ メス
来月一緒に映画を観に行きませんか?
¿Iremos con guía desde el hotel al aeropuerto?
イレモス コン ギア デスデ エル ホテル アル アエロプエルト
私たちはホテルから空港までガイドさんと一緒に向かいますか?
irse:その場から離れる
再帰動詞 irse には「その場所から離れる」という意味が含まれています。特定の目的地がなくても表現できるのが、ir とは異なる点です。
irse の意味と使い方
ある目的地へ「向かう」ことを表すのが ir であるのに対して、irse は「その場からいなくなる」ことを表します。
例えば、誰かの家にいて「そろそろ自分は行くよ(帰るよ)」と相手に伝える時には、どこへ行くかというよりも、その家から「離れる」ことがポイントになってきますよね。このようなシーンで使うのが irse です。
「自分の家へ行く」ということを伝えたいなら voy a mi casa(ボイ ア ミ カサ)と動詞 ir を使い、家へ行くためにどこかの地点から「立ち去る」ことを伝えるなら me voy a mi casa(メ ボイ ア ミ カサ)と、動詞 irse を使って表します。
再帰代名詞の人称変化と注意点
irse は再帰動詞であり、再帰代名詞(me・te・nos・os・se)を伴います。再帰代名詞は主語の人称・数と一致して形が変わるため、どのように変化するのかも覚えておきましょう。
【再帰代名詞の人称変化】
- (私)me
- (君)te
- (彼/彼女/あなた)*se
- (私たち)nos
- (君たち)os
- (彼たち/彼女たち/あなたたち)se
これらの再帰代名詞はほとんどの場合 ir の前に置かれ、命令形の肯定文では ir の後に置かれます。
*よくある間違いとして注意しておきたいのは、再帰代名詞の se は定冠詞の se や不定人称の se とは異なるものだということ。混同しないように役割の違いを理解しておきましょう。
irse の活用
再帰動詞 irse の現在形・点過去形・未来系の変化もしっかり覚えておいてくださいね。
【直説法現在形】
- (私)me voy
- (君)te vas
- (彼/彼女/あなた)se va
- (私たち)nos vamos
- (君たち)os vais
- (彼たち/彼女たち/あなたたち)se van
Me voy ya.
メ ボイ ジャ
私はもう行きます。(その場から離れるという意味)
【点過去形】
- (私)me fui
- (君)te fuiste
- (彼/彼女/あなた)se fue
- (私たち)nos fuimos
- (君たち)os fuisteis
- (彼たち/彼女たち/あなたたち)se fueron
Se fue hace una hora.
セ フエ アセ ウナ オラ
彼は1時間前に行ってしまいました。
【未来形】
- (私)me iré
- (君)te irás
- (彼/彼女/あなた)se irá
- (私たち)nos iremos
- (君たち)os iréis
- (彼たち/彼女たち/あなたたち)se irán
Nos iremos de aquí en una hora.
ノス バモス デ アキ エン ウナ オラ
私たちは1時間後にここを離れるつもりです。
irseを使った例文
以下は「その場から離れる」という意味の irse を使ったさまざまな表現例です。
Me voy ya.
メ ボイ ジャ
もう行くね。
¿Te vas ya?
テ バス ジャ
もう行くの?
Vinieron a la fiesta y al cabo de una hora se fueron a casa.
ビニエロン ア ラ フィエスタ イ アル デ ウナ オラ セ フエロン ア カサ
彼らはパーティに来て1時間もしないうちに家へ帰った。
Ella quería que él se quedara con ella un poco más de tiempo, pero él se fue.
エジャ ケリア ケ エル セ ケダラ コン エジャ ウン ポコ マス デ ティエンポ, ペロ エル セ フエ
彼女は彼にもう少し一緒にいて欲しかったけれど、彼は行ってしまった。
¿Nos vamos pronto?
ノス バモス プロント
私たち、そろそろ行かない?(その場から去るという意味)
¿A qué hora os vais?
ア ケラ オラ オス バイス
きみたちは何時に行く(出発する)の?
¿Te quedas aquí un poco más? ¿O ya te vas?
テ ケダス アキ ウン ポコ マス? オ ジャ テ バス ア カサ
もう少しここにいる?それとも、もう帰る?
Se irá antes de las 12.
セ イラ アンテス デ ラス ドセ
彼女は12時前には帰る(その場から出ていく)ようだ。
¿ Os iréis juntos?
オス イレイス フントス
(親しい相手に対して)一緒に行きますか?
ir と irse の使い分け
明確に ir と irse を使い分けられるように、文を比較しながら見ていきましょう。
【例① 】
《 ir 》一緒に住んでいない立場の人が言うフレーズ
Daniel va a trabajar todas las mañanas a las 9 en punto.
ダニエル バ ア トラバハール トダス ラス マニャーナス ア ラス ヌエベ エン プロント
ダニエルは毎朝9時に仕事に行きます。
《 irse 》一緒に住んでいる立場の人が言うフレーズ
Daniel se va a trabajar todas las mañanas a las 9 en punto.
ダニエル セ バ ア トラバハール トダス ラス マニャーナス ア ラス ヌエベ エン プロント
ダニエルは毎朝9時に仕事に行きます。
上の2つの文は日本語に翻訳すると同じ意味です。しかし、話し手がどこにいる立場で表現しているのかという点が異なります。
ダニエルさんと同じ場所にいるシチュエーションでは、自分がいる場所と同じ出発点から外へ向かっているので「その場を離れる」といる意味の irse に。同じ家に住んでいるわけではなく単に彼が9時に仕事に行くことを伝えるなら ir を使います。
下の例②も考え方は同じです。
【例②】
《 ir 》同じ場所にいなかった人が言うフレーズ
Carla y Laura fueron a la fiesta juntas.
カルラ イ ラウラ フエロン ア ラ フィエスタ フントス
カーラとローラは一緒にパーティーに行きました。
《 irse 》同じ場所にいた人が言うフレーズ
Carla y Laura se fueron a la fiesta juntas.
カルラ イ ラウラ セ フエロン ア ラ フィエスタ フントス
カーラとローラは一緒にパーティーに行きました。
【例③】
《 ir 》ある目的地へ向かうように伝える命令形
¡Ve!
ベ
行け!
《 irse 》その場から出て行くように伝える命令形
¡Vete!
ベテ
出て行け!
この2つの文は、ir/irse それぞれの命令形です。ve は「〜へ行け」と、どこかへ向かうことを伝えるフレーズ。離れた場所にいる人にも使えます。一方、vete は同じ場所にいる人に対して「ここから出て行け」という言葉です。
使い分け問題に挑戦!
さて、ここで10問の問題にチャレンジ!次のようなシチュエーションでは、ir か irse のどちらを使って表現するのが正しいでしょうか?
それぞれ ir または irse のどちらを使うかを選び、主語に合わせて人称変化させ、その他の単語を並び替えて文章を作ってください。答えは問題のあとにまとめて載せていますので確認してみてくださいね。
問題①家にいる家族に「僕はこれから仕事へ行ってきます」と声をかける場合。
ir/irse , trabajar , al
問題②誰かと一緒にいる時に「私はちょっとトイレに行ってきますね」と伝える場合。
ir/irse , servicio , al
問題③父親が自分の娘と息子に「出かける準備はできているか?」とたずねる場合。
¿ ir/irse , para , listo ?
問題④取引先の会社に電話をかけて「マリアさんは3時には出かけられましたか?」と確認する場合。
¿ ir/irse , a , tarde, María , las ,tres , la, de ?
問題⑤道路の渋滞があるとわかった時、「道が混んでいるから電車で行こう」と同伴者に伝える場合。
ir/irse , en , hay , la, en , un , carretera , así, tren, atasco , que
《答え》
① irse → Me voy al trabajar.(メ ボイ アル トラバハール)
② ir → Voy al servicio.(ボイ アル セルビシオ)
③ irse →¿Estáis listos para iros?(エスタイス リストス パラ イルオス)
④ irse →¿María se fue a las 3 de la tarde?(マリア セ フエ ア ラス トレス デ ラ タルデ)
⑤ ir → Hay un atasco en la carretera, así que vayamos en tren.(アイ ウン アタスコ エン ラ カレテラ, アシ ケ バヤモス エン トレン)
さて、あなたは5問中何問正解できましたか?
ir/irse を使った会話例
最後に ir と irse を使った実際の会話例を見ていきましょう。どんな表現に ir と irse が使われているのかに注目しながら、声に出して読んでみてください。
Martín:¿Qué hiciste ayer por la noche?
ケ イシステ アジェール ポル ラ ノーチェ
昨日の夜は何をしていたの?
Emi:Salí con María.
サリ コン マリア
マリアと出かけていわ。
Martín:¿A dónde fuisteis?
ア ドンデ フイステイス
どこに行ったの?
Emi:Fuimos a la calle Huertas a tomar una copa.
フイモス ア ラ カジェ ウエルタス ア トマール ウナ コパ
ウエルタ通りに飲みに行ってたのよ。
María se va a trabajar a Japón, así que le recomendé algunos sitios a los que ir.
マリア セ バ ア トラバハール ア ハポン, アシ ケ レ レコメンデ アルグノス シティオス ア ロス ケ イル
マリアが仕事で日本へ行くっていうから、おすすめの場所を教えてあげていてね。
Martín:¿Cuándo se va?
クアンド セ バ
(マリアは日本へ)いつ行くの?
Emi:El mes que viene.
エル メス ケ ビエネ
来月。
Martín:Cuando vuelva, tenemos que quedar los tres.
クアンド ブエルバ, テネモス ケ ケダール ロス トレス
彼女が日本から戻ってきたら、3人で会おうよ。
Emi:Vale. ¡Ah! Son las dos. Yo me voy ya, que tengo que ir al banco antes de las dos y media.
バレ. ア, ソン ラス ドス. ジョ メ ボイ ジャ, ケ テンゴ ケ イル アル バンコ アンテス デ ラス ドス メディア
OK! あっ、もう2時だ。2時半までに銀行に行かないと。そろそろ行くね。
Martín:Bueno. ¡Hasta luego!
ブエノ. アスタ ルエゴ
ああ、じゃあまた!
おわりに
ir と irse の違いが理解できましたか?「行く」という言葉にもさまざまなニュアンスがあることがわかったのではないでしょうか。
ir と irse を使いこなせるようになるだけで、日常で伝えられる表現がかなり豊かになるはずです。2つの単語の使い分けを意識しながら、会話をさらに弾ませていきましょう!