スペイン語を公用語とする国は世界で21カ国あります。さらに、スペイン語を話す人が多い地域を含めれば、それ以上。
スペイン語を学んだらどれほど広い場でその知識を活かすことができるのか、スペイン語圏の魅力に迫ります!
スペイン語圏の魅力を徹底解説!21カ国の公用語、その多様性と可能性
目次
スペイン語の広がりと魅力
世界中で話されている言語は7168語あるといわれています。その中でもスペイン語は中国語に次いで2番目にネイティブスピーカーが多い言語です。
スペイン語を公用語としている国は合わせて21カ国。人数にして約5億6000万人もの人がスペイン語を母国語にしています(2023年統計より)。
スペイン語がわかれば、世界中の多くの人たちとコミュニケーションがとれるようになり、ネットワークを広げることができます。趣味や知識を増やし、仕事や将来に活かしていくこともできるでしょう。
世界でのスペイン語の位置づけ
スペイン語の話者数とその背景
全世界196カ国の中で母国語として使われている言語のうち、もっとも多いのが中国語、そして2番目に多いのがスペイン語です。
第2・第3外国語を含めた話者数では、英語・中国語・ヒンディー語に続く4位がスペイン語。スペイン語を話せる人やスペイン語を勉強している人はこんなにも多いのです!
中国語やヒンディー語はもともと人口が多い国なので、話者数が多いのも当然ですね。しかしスペイン語を公用語とする国々の人口は、それぞれの国で見れば中国やインドに比べて10分の1以下。
それでも母国語ランキングで世界2位に位置しているのは、スペイン語を使っている国の総数が多いからです。
《世界の母国語ランキング(2023年)》
- 1位 中国語
- 2位 スペイン語
- 3位 英語
- 4位 ヒンディー語
《世界の言語話者数ランキング(2023年)》
- 1位 英語(約14.6億)
- 2位 中国語(約11.4億)
- 3位 ヒンディー語(約6.1億)
- 4位 スペイン語(約5.6億)
世界中にスペイン語を話す人が多いワケ
スペイン語を公用語とする国が多い理由は、歴史的な背景が関係しています。
1492年にコロンブスがアメリカ大陸を発見し、スペインは中南米(ラテンアメリカ)の国々を植民地として支配していきました。スペイン領となった国ではスペイン語が使われるようになり、今でもその文化が残されています。
また、スペイン語を母国語とする人々がアメリカをはじめとする他の国へと移住をすることで、スペイン語の話者が世界中へと広がっています。
スペイン語を公用語とする国と地域
スペイン語を公用語としている世界の国と地域を見ていきましょう。中央アメリカ・南アメリカ・ヨーロッパなど、各地に全21カ所あります。
中部アメリカのスペイン語圏
- El Salvador(エルサルバドル)
- Guatemala(グアテマラ)
- Honduras(ホンジュラス)
- Nicaragua(ニカラグア)
- Costa Rica(コスタリカ)
- Panamá(パナマ)
- México(メキシコ)
- Cuba(キューバ)
- República Dominicana(ドミニカ共和国)
- Puerto Rico(プエルトリコ)
北アメリカと南アメリカの間にある中央アメリカは、7カ国から成っている地域です。そのうち、エルサルバドル・グアテマラ・ホンジュラス・ニカラグア・コスタリア・パナマの6カ国がスペイン語を公用語としています。
残る1カ国であるベリーズは、かつてイギリス領だった歴史があり現在は英連邦王国に属しています。そのため公用語は英語です。
周辺のメキシコやカリブ諸国を含む地域は“中部”アメリカと定義されていて、このエリアでスペイン語を公用語としているのはメキシコ・キューバ・ドミニカ共和国・プエルトリコの4カ国。中でもメキシコはスペイン語を学ぶ留学先として日本人にも人気ですね。
プエルトリコはアメリカ合衆国の自治領であり、スペイン語と英語が公用語ですが、住民のほとんどが日常的にはスペイン語を使っています。
南アメリカのスペイン語圏
- Argentina(アルゼンチン)
- Uruguay(ウルグアイ)
- Ecuador(エクアドル)
- Colombia(コロンビア)
- Chile(チリ)
- Paraguay(パラグアイ)
- Venezuela(ベネズエラ)
- Perú(ペルー)
- Bolivia(ボリビア)
南アメリカでは、9カ国でスペイン語が公用語となっています。新大陸発見以降、15世紀から17世紀にかけて中南米の国々はスペインの植民地となり、スペイン語が用いられるようになりました。
しかし先住民の言語が使われている地域もあり、スペイン語圏内でもイタリア語やドイツ語が話されている地域も一部あります。
スペイン語を公用語とする国でもそれぞれ独自の言葉やアクセントを持ち、言語文化の特色が各国で異なるのも、この地域の特徴です。
アフリカのスペイン語圏
- Guinea Ecuatorial(赤道ギニア共和国)
赤道ギニア共和国はアフリカ大陸の中央部に位置している国で、ギニア湾に浮かぶ島々も含まれています。この国は18世紀から20世紀後半まで長い間スペインの植民地だったため、現在でもスペイン語を第1公用語としています。
教育やビジネスで一般的にスペイン語が使われているのは、アフリカでは唯一この赤道ギニア共和国だけです。
ヨーロッパのスペイン語圏
- España(スペイン)
ヨーロッパでは、もちろんスペインです。ただ、スペインの中でも地方によってカタルーニャ地方ではカタルーニャ語が、バスク地方ではバスク語が、バレンシア地方ではバレンシア語がその地域の公用語にもなっています。
例えば観光地として人気の街バルセロナへ行くと、道路の標識やショップ店員さんが話しかけてくる言葉がスペイン語ではないことに戸惑うかもしれません。
このように地域によって各地の言語を引き継いでいるという多様性こそが、スペインの魅力でもあります。場所によっては異なる言語が飛び交っていたとしても、国民の共通語はスペイン語です。旅行や出張の際にスペイン語で話しかければ、当然通じます。
その他のスペイン語が通じる地域
スペイン語系の移民が多いアメリカでは、スペイン語がよく使われています。特にカリフォルニア・アリゾナ・ニューメキシコ・フロリダはスペイン語話者が多い地域です。
アメリカにおけるスペイン語話者は5400万人を超すのだとか。スペインの人口は約4800万人なので、スペインに住むスペイン人よりもアメリカに暮らすスペイン語話者のほうが多いということです。
アフリカでもスペイン語話者は150万人以上いるといわれ、将来的にも世界でスペイン語を使う人は増えていくだろうと予測されています。
フランスの国境にある小さな国Andorra(アンドラ)はカタルーニャ語を公用語とする国ですが、スペインと隣接しており、アンドラでも多くの人がスペイン語を使えます。
国によるスペイン語の違いと共通点
スペイン語圏の国々には、それぞれ独自の伝統や文化があります。スペイン語の使い方も異なり、同じスペイン語話者同士でも発音や表現はさまざま。ここからは大きな違いについて解説していきます。
エスパニョールとカスティジャーノの違い
スペイン語で「スペイン語」を表す言葉は Español(エスパニョール)です。しかし、スペインのスペイン語と中南米のスペイン語は異なるため、それぞれに呼び名があります。
中南米で使われているスペイン語は「Español(エスパニョール)」。一方、スペインで使われているスペイン語は「Castellano(カスティジャーノ)」。
例えば、ネットフリックスやアマゾン・プライムなどの動画配信サービスでは、映画・ドラマのオーディオや字幕の設定に español / castellano という選択肢があります。
中南米のスペイン語とスペインのスペイン語では表現が異なるため、それぞれ別に設定されているのです。
中南米では tú は使わない
エスパニョールとカスティジャーノが大きく違う点は、二人称に対する表現の仕方です。スペインでは「君」に当たる単数二人称を tú(トゥ)、「あなた」に当たる丁寧な言い方では usted(ウステッ)を使います。
しかし中南米では tú を使わず、二人称はすべて usted 。スペインのように相手によって tú と usted を使い分けることはなく、親しい間柄でも usted です。
複数形は ustedes(ウステデス)となり、スペインで使用されている vosotros(ボソトロス)は使いません。
各国の独自の言葉や発音の特徴
具体的にどんな言葉がスペインと中南米では違うのか、簡単に例をご紹介します。これら以外にも国によってスペイン語の表現や発音は異なります。
《スペインと中南米で異なる表現》
意味:スペインで使われる単語 / 中南米で使われる単語
- つかむ:coger(コヘール)/ tomar(トマール)
- 運転する:conducir(コンドゥシール)/ manejar(マネハール)
- ケガする:hacerse daño(アセルセ ダニョ)/ lastimarse(ラスティマルセ)
- 捨てる:tirar(ティラール)/ botar(ボタール)
- 立ち上がる:levantarse(レバンタルセ)/ pararse(パラルセ)
- 怒る:enfadarse(エンファダルセ)/ enojarse(エノハルセ)
- 縛る:atar(アタール)/ amarrar(アマラール)
- 返す:devolver(デボルベール)/ regresar(レグレサール)
- 自動車:coche(コチェ)/ carro(カロ)、auto(アウト)
- 携帯電話:móvil(モビル)/ celurar(セルラー)
- 切符:billete(ビジェテ)/ boleto(ボレト)
- パソコン:ordenador(オルデナドール)/ computadora(コンプタドラ)
- ウエイター:camarero(カマレロ)/ mesero(メセロ)
- 美しい:bonito(ボニート)/ lindo(リンド)
- かっこいい:guapo(グアポ)/ hermoso(エルモソ)
中南米でNGのスペイン語
coger(コヘール)という単語はスペインで「タクシーをつかまえる」「皿を取る」「風邪をひく」といった時に 使われるポピュラーな動詞です。
しかし中南米では、セクシュアルなニュアンスを含む言葉として知られているため、この動詞は使われていません。中南米のスペイン語圏の人たちと会話をする時には要注意ですよ!
代わりに、tomar(トマール)や agarrar(アガラール)などを使うのですが、詳しくは下記の記事で解説していますので、そちらを併せてチェックしてみください。
アルゼンチン独特の ll・ya の発音
スペイン語の ll または y の発音は、国や地域によって異なります。lla・ya は「ジャ」「ヤ」「リャ」。アルゼンチンでは独特の特徴があり、lla・ya は「シャ」と発音します。
「私(yo)」は、スペインでは「ジョ」、アルゼンチンでは「ショ」。「電話をする(llamar)は「シャマール」、「雨が降る(llueve)」は「ショエベ」。
発音のほかに、単語が異なるものも多くあります。
スペインではボールペンのことを bolígrafo(ボリグラフォ)または boli(ボリ)といいますが、アルゼンチンでは birome(ボロメ)。
アルゼンチン以外の国でも違いがあり、例えばコロンビアではボールペンは esfero(エスフェロ)です。このように、国によって独自の表現方法が用いられています。
スペイン語の世界的な影響と重要性
スペイン語学習のメリット
スペイン語を覚えれば、世界中のさまざまな国や人、文化や社会と繋がることができます。オフラインでもオンラインでも、ネットワークを広げていけるでしょう。多様な交流・情報・知識が増えれば、それだけ自分にとってのチャンスも見つけやすくなるはずです。
趣味や交流に役立つだけではなく、仕事での活躍やキャリアにも結びつきます。一度覚えたスペイン語は将来に渡って利用可能であり、大切な財産にもなります。多くの可能性を広げていけるというのは、スペイン語を学ぶ大きなメリットです。
スペイン語は世界に注目される重要な言語
ビジネス分野においてスペイン語は非常に重要視されている言語です。スペイン語圏の経済的ポテンシャルは高く、今後の成長が期待されています。
豊富な資源を有し、技術開発・観光・ITなど多くの分野で、スペイン語圏の市場と人材は、もっとも注目されるものであることは間違いありません。
スペイン語のスキルがあれば、国際的に活躍できる場を増やしていけることでしょう。留学をして異国の友達を作る、というのも人生において貴重な経験となります。
スペイン語圏各国の伝統を知り、文化に触れることで、国際情勢への理解もより深まっていくのではないでしょうか。
スペイン語を学ぶきっかけが中南米やアメリカと関連していたとしても、もしくはスペインやヨーロッパから入ったとしても、入り口は違えどもスペイン語を学んでいくと、その他のスペイン語圏のさまざまな文化や表現についても自然と知っていく機会が訪れます。
1つの国に限らず、いろいろな国の知り合いや友達もできるはずです。そうした広がりがあるのが、スペイン語を身につける面白さであり、また強さでもあります。
スペイン語学習を活用してチャンスを広げよう!
スペイン語を習得して、自分を活かせるフィールドを増やしていきましょう。どんなことでもいいので何か目標を持つと、学習のモチベーションが維持できます。
スペイン語のドラマを字幕なしで観たい、サッカー中継を聞き取れるようになりたい、SNS上でコミュニケーションがとれるようになりたい、といった身近な目標でも十分!
コツコツとスペイン語を身につけていくうちに、きっと新たな楽しみや発見に出合うはずです。
実際の会話例を通じて見るスペイン語圏の多様性
最後にスペイン語圏に関する会話例を通して、スペイン語の表現をチェック!スペイン語圏の特徴を象徴するような会話内容に注目してください。
Satoshi:Antonio, ¿de dónde eres?
アントニオ, デ ドンデ エレス
アントニオさんは、どちらの出身ですか?
Antonio:Soy de Venezuela.
ソイ デ ベネズエラ
僕はベネズエラ出身です。
Satoshi:¡Ah! Igual que Santos, ¿no?
アア, イグアル ケ サントス, ノー
ああ、ではサントスさんと同じですね。
Antonio:No, Santos es de Colombia. Yo soy del país vecino.
ノー, サントス エス デ コロンビア. ジョ ソイ デル パイス ベシーノ
サントスさんはコロンビア出身ですよ。僕はその隣の国生まれです。
Satoshi:¡Ay, perdona! En España hay mucha gente de Centroamérica y Suramérica. A veces me confundo con los países.
アイ、ペルドン. エン エスパーニャ アイ ムーチャ ヘンテ デ セントロアメリカ イ スルアメリカ. ア ベセス メ コンフンド コン ロス パイセス
失礼しました!スペインには中南米出身の方が多いですよね。時々混乱してしまって。
Antonio:No te preocupes. La verdad es que sí, hay gente de muchos países
diferentes.
ノー テ プレオクペス. ラ ヴェルダッ エス ケ シー, アイ ヘンテ デ ムーチョス パイセス ディフェレンテス
いえいえ、気にしないでください。確かに、いろんな国から来ている人がいますからね。
En mi empresa también tengo compañeros de Bolivia, Perú y Ecuador.
エン ミ エンプレサ タンビエン テンゴ コンパニェロス デ ボリビア, ペルー イ エクアドル
うちの会社にもボリビア、ペルー、エクアドルの同僚がいますよ。
Satoshi:Por cierto: Lucas también habla muy bien español.
ポル シエルト, ルーカス タンビエン アブラ ムイ ビエン エスパニョール.
そういえば、ルーカスさんもスペイン語が上手ですよね。
Antonio:Sí. Lucas es de Florida pero, como allí hay mucha gente que habla español, lo habla muy bien.
シー. ルーカス エス フロリダ ペロ, コモ アジ アイ ムーチャ ヘンテ アブラ エスパニョール, ロ アブラ ムイ ビエン
ルーカスさんはフロリダ出身なんですけど、アメリカでもスペイン語を使うことが多かったそうで、とても上手ですね。
Satoshi:¡Qué envidia! Si hablas español, puedes comunicarte con gente de muchos países.
ケ エンビーダ. シー アブラス エスパニョール, プエデス コムニカルテ コン ヘンテ デ ムーチョス パイセス
スペイン語が話せると、世界中で活躍できてうらやましいなぁ。
まとめ
留学・旅行・就職・移住…。スペイン語圏を視野に入れると、たくさんの選択肢と可能性が見えてきます。スペイン語を活かせる場は日本国内にも世界各国にもあります。目標や楽しみを持ちながら、スペイン語を学んでいってください。